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〜エコペン通信 【No.7】〜

 

【 コ ラ ム 】

人間の持つエネルギーの行方を考える

<文:長瀬 敬子(山形県地球温暖化防止活動推進員、天童市)>

 「山形県地球温暖化防止活動推進員研修があるのですが、受講してみませんか?」山形県地球温暖化防止センター センター長の松村さんからお誘いを受けたのが、平成16年の春であった。まだまだ「地球温暖化」という言葉が日常には見あたらない時期で、半分は興味本位で軽い気持ちで講座に臨むことになった。それまでの私は、科学技術は限りなく進歩し、いずれはアトムが住むような世界がやってくると思っていた。しかし、現実は私が想像していた以上にシビアーで、いかに人類が自然に対して尊大で傲慢であったかを学ぶと同時に、知らないことの罪を痛感させられる内容だった。まさに目からウロコ、晴天の霹靂と言った事実に出くわした感がある。

 あれから4年近くが経過し、センター主催のエコツアーの引率をして全県の環境施設を巡ったり、出前講座や廃油ろうそく作りの講師を務めたりと、地球温暖化防止に係る啓発活動を行っている。様々な講演会やセミナーにも足を運ぶ機会が増えた。家庭の中では、生ゴミリサイクル機でゴミを減量し、雑紙や雑誌等も捨てずに回収へ、スーパーでの買い物にはマイバック持参は当たり前となった。電球の交換時期には電球型蛍光ランプに変え、使っていないコンセントは抜くことを心がける、と少しずつ生活も変化している。

 私が担当する講座では、「1人が100やることよりも、100人が1つやること。1人が2つ3つと実践していけば飛躍的に拡がっていくから」ということを必ず伝えている。実は私の家で一番熱心なのは母である。地球温暖化防止に関する情報を伝えただけで即実践してくれた良き理解者だ。このように、民生部分では伝える・伝播させることが今最も重要だと思う。そして当事者意識を持って貰うこと、地球を構成しているのは私達であるという認識、特に人類が自然の一部であることを改めて知ることだと思っている。

 昨年私は生まれてはじめて、手作業の田植えと稲刈りを体験した。また、私が所属している地産地消研究会の事業として、遊休田を利用して豆を植えて夏と秋に収穫を行っている。普段自分のエネルギーを、PC上や会話や単なる日常作業で消費している私には、農作業自体とても大変で、でも新鮮で楽しい時間だった。そして貴重な体験になった。そして、間違いなく今地球に起こっていることは人類に対する警告に他ならないということを感じ取ることとなった。様々な自然環境の変化は、エネルギーこれは単なる地下埋没エネルギーだけではなく、食料や水といった人類が存続するのになくてはならない資源の確保が出来なくなっていくことを予感させている。特に自給率39%という驚くべき数字のこの日本において、今私たちがなすべきことは自分達のエネルギーを農に向けて食料自給率のUPを目指すことではないかと真剣に考えている。少なくともすべてを人任せ(海外任せ)にすることなく、何かは自分で作ってみる。作れるノウハウを知ること。それが家庭菜園であれ、稲作であれ、加工食品の味噌や漬物であれ、そこに自然は必ず見えてくる。自分を自然サイクルの中に置いてみる。そして自然の一部にしか過ぎないことを実感してくると、温暖化防止活動が日常の必然的な活動に組み込まれるように思える。

 車のない時代には足で歩き、電気のないときには火を灯し、家族みんながその火を分け合った。世知辛いことばかりが多い昨今ではあるが、進むことばかりを求められた現代人には、少し立ち止まり先人の知恵に習ってみることも必要な時が来たのではないかと考える。